−水車物語1− 亀の子堰には悲しい伝説があり、子供の頃にはよく聞かされた。 巴波川は平野を流れる川の多くがそうであるように、よく洪水を出す暴れ川で、毎年のように切れる堰を直さなくてはならない川沿いの村人達は、ほとほと困り果てていた。或る年の修復工事の中休み中に出た、人柱を立てると堰や堤が切れないという世間話が、村の権力者である名主の一声でにわかに実行という事になり、一番最初にお昼の弁当を持ってきた者を恨みっこ無しで堰に埋めるべぇとなった。そして来たのは皮肉にも亀と言う幼い名主の娘だった。驚いた名主が帰れ帰れと手をふっているのを、早く来いと言っていると勘違いした幼い亀が、息せき切って駆けつけたところを村人達が取り囲み・・・と言う話。僕は何度この幼い亀が勘違いしてというところを想像して泣いたか知れない。ただ、この亀の子堰が、自分の家の水車に絡む水路の源だったとは、うかつにも大人になるまで知らなかった。初恋のキヨちゃんと絡めるつもりはないけれど、なにか話の遠近法として切なくなる。
巴波川、下初田の亀の子堰 亀の子堰水門
亀の子堰、与良川取水口 巴波川土手(右・巴波川、左・与良川)
嗚呼! 亀の子堰
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