落語の真似事

二階だとトントントンと上がってこられると
逃げ場がないし、

押入れだと中腰でくたびれちゃっていけない。

どこかないかな… 
(手のひらをポンと)そうだ!あるある!

便所!
あそこなら「エヘン!」なんていえば
誰も入ってきませんから。
はばかり、はばかりと…

(ちょいとの間)

だんな様、ただいま帰りました。…だんな様?

お、いないよ!
しめしめ、こうなったら命の洗濯させてもらおうか。
さっきの豆、食べちゃおう。

(食べる)

旨い!

(さらに食べる)

待てよ、
こうしているところへだんな様が帰ってくると、
「(定吉!)また食べてるな!」って、怒られちゃう。
どこか安心して食べられるところはないかな?
(家の中を見渡す)

☆総本舗に

二階だとトントントンと上がってこられると
逃げ場がないし、

押入れだと中腰でくたびれちゃっていけない。

どこかないかな…
(手のひらをポンと) そうだ!あるある!

便所! 
あそこなら「エヘン!」なんていえば
誰も入ってきませんから。
はばかり、はばかりと…

(便所の戸を開ける)

あぁ、だんな様!

おまえ、何しに来た!!

は、はい、お替りを持ってきました。


                
            おあとがよろしいようで。

★コレは二十数年前に某アニメ業界情報誌に
掲載の私の文章です。
ホントは「あにめ家コンテ」なのですが、
何故か「アニメ家コン亭」にされてしまいました。
ホントは、って言うのも変ですね。
実はこのころの私、落語も演じておりまして、その師匠からいただいた名前なのです。
師匠というのは柳家小さん門下の柳家さん助師匠。
私がアニメの世界の人間だからって、
「あにめ家コンテ」。まぁ、なんとベタな(笑)。

☆あにめ家コンテとは誰?

 もう一つ、英語に変換した小噺のご紹介。これ、「廻りオチ」といってグルリと廻ってオチになるというもの。
「可愛い子猫に、強そうな名前を付けてくれないか」
という頼みに

「虎はどうだ」「いや、竜のほうが強い」「竜には雲が付きものだ」「雲を吹き飛ばす風だろう」
「風なんか壁が防ぐさ」「壁ならネズミが穴開ける」「ネズミなんざ猫が食っちまう」
「じゃ、この猫はやっぱり<猫>だ」
と。

覚えていただくと、何かの際にお役に立つ?かもね(笑)。

☆弟子入りすると、先ず最初に教わる噺は「一分線香即席噺」といって、ごくごく短い小噺。

「向こうの空き地に囲いが出来たってね」
「へぇ〜(塀)」
「タバコ盆がひっくり返ったよ」
「ハイ(灰)拭きましょう」
「表を坊さんが通るね」
「そう(僧)かい」

…なんて奴。

そして、次のようなほんの数分で終る噺から覚えます。
なぜに英文なのか、それは私が合作アニメの仕事でLA滞在中に、
パーティーなどでの隠し芸(衣装は浴衣に扇子、一応「出囃子」のテープ持ち込み)として演じた時の台本。
懐に入れておいて、万一の時のアンチョコです(詰まって、取り出すと逆に受ける・笑)。
現地の日本人スタッフの前で私が演じて、それを英語に変換してもらったもの。
アンダーラインのところは、丸暗記が難しい部分だったのかも?
ちょうどそのころ、落語を英語でやることに枝雀さんが挑戦されていて、LAにも公演に来られていた。
後年その様子を見ましたが、見事に演じられていて、その素晴らしさには改めて脱帽、敬服するばかりです!
不世出の逸材、早逝は残念。

I've got a cute little kitten recently. And I want you to name my cat, something strong name.

Something strong?
How about Tiger?

Tiger....... Dragon is stronger than Tiger, don't you think?

Oh.... Dragon sound strong.
But Dragon should have clouds. Unless there are clouds, Dragon does not make a perfect match.

So, what about Clouds?

Ummm..... Clouds.......

But, don't you think Wind is stronger than Clouds?
Wind can blow Clouds away.

Then, should ve name the kitten "Clouds"

Oh, No...... Wall fits better, because Wall can block Wind.

Wall?

Mouse is better than Wall, 'cause a mouse can make a hole on the wall.

You mean, this little kitten's name is Mouse?

No...No... Cat is stronger than a mouse. 'cause cat can eat a mouse.

That's right. this kitten should be named "CAT"

おい、おい(定吉や)、
ちょっとそこの「豆」が煮えたかどうかみておくれ。

はい、だんな様。

(食べる定吉)

おいおい、誰が食べてもいいと言った!

スミマセン。

もう、いいから隣へ行って、
先日の件がどうなったか聞いてきてくれないか。

(見送って)

やれやれ、使用人なんて仕方の無いものだ。
何も食べなくたって分かりそうなものなのに…
だが、待てよ…この豆、美味しそうだったな。
どれ、ひとつ。

(食べる旦那)

うん、なるほど! 
コレは(定吉)食べたくなるわけだ。

(さらに食べる)

待てよ、
こうして食べてるところを他の使用人に見付かると示しがつかないな…
どこか安心して食べられるところはないかな…
ウーン…
(家の中を見渡す)

 落語に挑戦。これも、味噌作り同様に増岡弘さんの導きです。
彼は「益々家ちゃん助」という高座名をお持ちの、本職も裸足で逃げるほどの落語を聞かせる、
「俳協落語研究会」の大真打。
「あなたは監督業として、人前でしゃべる機会が多いんだから、話す技術を学ぶことも必要です。」
とかなんとか言いくるめられて、入門させられました。
落語協会の大看板でもある、柳家さん助師匠から、役者でもないド素人が教えを受けるんですから、
もうコリャ大変なことです。
四谷三丁目にあった稽古場で週一回、数時間みっちりと…(ま、数人が順番にですけどね)。
ある日のこと、私が落語を演ってることを知った某編集者が
業界をテーマにした、落語的な語り口調の文章を依頼してきました。
それをご開帳。文庫(ふみくら)ページではなく、ここに転記するのは「落語」ということで…

☆総本舗に

実際に高座に上がって演ってた辺りのことは…まぁ、いずれその内。
最終的にはビデオ映像を貼り付けたりして(笑)。音声くらいなら有りなのかもね。

※なお、ここに書かれた内容は、私が当時に構えていた事務所で、実際に起きたことが基になっております(笑)。