基礎の基礎
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発振回路


発振回路


電子回路の中で欠かせない回路の一つに「発振回路」があります。
この回路は「周期的に電圧(電流)が変化する信号」を作り出すためのものです。

発振回路は、その用途や目的によって様々な方式のものが使われます。実際に設計を行う場合にはあらかじめ以下の事項を検討しておくと良いでしょう。
  1. 欲しい波形(正弦波、矩形波、三角波、歪率)
  2. 周波数(低周波/高周波、固定/可変、精度、安定度)
  3. 信頼性(異常モードでの発振、経年変化、温度特性)

  1. 「発振」とは?

  2. CRを使った発振回路
     ・ウィーンブリッジ形
     ・移相回路を利用したもの

  3. LC同調回路(共振回路)を使った発振回路
     ・コレクタ同調形
     ・ハートレー形
     ・コルピッツ形

  4. 水晶(又はセラミック)振動子を使った発振回路
     ・ピアスBE発振回路
     ・ピアスCB発振回
     ・論理素子を用いたもの

  5. 矩形波発振回路
     ・リング発振器
     ・ヒステリシス特性を利用したもの
     ・非安定マルチバイブレータ

「発振」とは?
電子回路の「発振」身の回りにある「発振」
・発振開始条件:
  1. 1倍より大きな正帰還がかかり、
  2. 360度位相がずれた信号が入り、
  3. 振動の種が存在すること。
・柱時計の振り子やブランコの揺れが大きくなるのはなぜ?
  1. 右に揺れたときに右向きに、左に揺れたときに右向きに力を加えると揺れは次第に大きくなってゆく。
  2. 但し、揺れが全く無い場合にはいつ力を入れれば良いのか分からない。
・発振継続条件:
  1. 正帰還の量が1倍であり、
  2. 360度位相がずれた信号が入り、
  3. 既に振動が発生していること。
・柱時計の振り子の揺れ幅が一定なのはなぜ?
  1. 振り子の揺れを大きくしようとする力(駆動力)と、振り子の揺れを小さくしようとする力(損失)のバランスがとれた状態となっているため。

発振回路
回路の構成特徴(波形、原理、注意点等)





CRを使った発振回路:
  1. 発振周波数を決定する要素としてCR(コンデンサと抵抗器)を用いた回路。
  2. 正弦波に近い波形を得ることが出来る。
  3. 周波数精度はさほど良くない。
ウィーンブリッジ形
(Wine-bridge oscillator)

  • 正弦波発振回路の代表格。
  • CR(コンデンサと抵抗器)で構成されるバンドパスフィルターを利用したもの。
  • 比較的低い周波数で使われる。(数Hz〜数十KHz)
  • 増幅度が高過ぎると歪みが多くなり、増幅度が低いと発振出来なくなる。通常は自動的に増幅度を調整するような回路を付加して使われる。
    (その昔、真空管で回路を組んでいた時代には左に示した回路の「R3」に相当する部分に白熱電球が使われていました。)
ウィーンブリッジの周波数特性
移相回路を利用したもの。
(移相形発振回路)



・CR回路を通すことによる位相の変化(*1)を利用したもの。
・周波数精度はあまり良くない。
・比較的低い周波数で使われる。(数十KHz以下)
・CR1段あたりの位相変化は90゚より小さい。従って180゚の位相変化を得るためにはCRを3段以上重ねる必要がある。
(増幅器自身での位相遅れが無い場合、左図の一番下の回路では発振しない。)

*1:遅延回路(積分回路)による位相の遅れ、進み回路(微分回路)による位相の進み。
*2:左の図にはCRによる「位相遅れ」の回路を示した。CRを入れ換えることにより「位相進み回路」となる。
移相回路の周波数特性



調



LC同調回路(共振回路)を使った発振回路:
  1. 発振周波数を決定する要素としてLとCが使われた回路。
  2. 正弦波に近い波形を得ることが出来る。
  3. 周波数精度はCR発振回路よりも安定している。
コレクタ同調形
緑色で示された部品はトランジスタにバイアスを
かけるためのもの。
参考書によっては省略されている事がある。

・正弦波発振器
・LとCで構成される同調回路(共振現象)を利用したもの。共振回路に蓄えられたエネルギーの一部をピックアップコイルで取り出し、それを増幅して再度共振回路に供給する。 ・CRを使ったものより周波数精度が高い。
・低周波〜高周波で使われる。(数十Hz〜数百MHz) ・UHF帯ではL、Cを分布定数として扱う必要がある。 (300MHzを超えるような周波数での「LC共振回路」は「金属の棒と金属同士の空間」に置き換わる。)
ハートレー形
(Hartley oscillator)
   
・正弦波発振器
・共振回路の中の電位の高い部分から電圧成分を取り出し、電流増幅器(電圧利得は1以下)に加える。増幅器の出力は共振回路の中の電位が低い部分に接続される。 (コイルにタップを設け、共振回路自身を「昇圧器」として機能させる。)
コルピッツ形
(Colpitts oscillator)
   

・正弦波発振器
・共振回路の中の電位の高い部分から電圧成分を取り出し、電流増幅器(電圧利得は1以下)に加える。増幅器の出力は共振回路の中の電位が低い部分に接続される。 (ハートレー発振回路の「コイルのタップ」を「コンデンサの途中」に置き換えたもの。)





水晶(又はセラミック)振動子を使った発振回路:
  1. 発振周波数を決定する要素として圧電効果(*1)を持った振動子が使われた回路。
  2. 正弦波に近い波形を得ることが出来る。
  3. 周波数精度はCR発振回路よりも安定している。(セラミック振動子よりも水晶振動子の方が安定。)
  4. 結晶をカットする方向により温度係数が変化する。(「ATカット」と呼ばれるものは常温付近で温度係数がゼロとなる。)
  5. 発振周波数(基本振動周波数)は、水晶振動子で数百kHz〜20MHz程度。
  6. 20MHzよりも高い周波数を発振させたい場合には、基本周波数の奇数倍(通常3倍か5倍)で共振させる使い方がある。(オーバートーン発振。)
*1 圧電効果:水晶の結晶から切り出した切片に電圧をかけると機械的な歪みを発生し、また機械的歪みを与えることにより電圧が発生する現象を指す。「ピエゾ効果」とも呼ばれる。
*2 水晶振動子
ピアスBE発振回路
(Pierce's BE oscillator)
緑色で示された部品はトランジスタにバイアスを
かけるためのもの。
参考書によっては省略されている事がある。
   

・周波数は高め。(並列共振周波数に近い)
・X1を「L」、C1・L1の共振回路を誘導性素子とみなすとハートレー形発振回路(の変形)となる。
ピアスCB発振回路
(Pierce's CB oscillator)
   
・周波数は低め。(直列共振周波数に近い)
・X1を「L」、C1・L1の共振回路を容量性素子とみなすとコルピッツ形発振回路(の変形)となる
論理素子を用いたもの
(コルピッツの変形)
   
・デジタル機器の中で数多く使われる発振回路。
・X1を「L」とみなすとコルピッツ形発振回路(の変形)となる。






矩形波発振回路:
  1. 論理素子(デジタルIC)と相性が良い。
  2. 発振周波数はC,Rの値だけでなく論理素子の特性にも大きく影響を受ける。
リング発振器
(Ring oscillator
ゲートの遅延時間を利用したもの)

・矩形波発振回路。(但しゲートの段数が少ない場合は正弦波に近い波形となる。)
・反転素子(インバータ)のゲート遅延時間を利用した回路。反転素子を奇数段(但し3段以上)接続しただけの単純な回路で構成される。発振の原理は「移相形発振回路」と同じ。
・この発振回路は論理素子の大まかな動作速度を計測する際にも利用される。
ヒステリシス特性を利用したもの。

・矩形波発振回路。
・発振周波数はCRの値だけでなく素子のヒステリシス特性にも影響される。
・100%確実に発振させることが出来る。
(但し、素子が故障したり、限界の最高周波数で動作させた場合はこの限りでない。)
非安定マルチバイブレータ
(微分回路を利用したもの)
・教科書に出てくる矩形波発振回路の代表格。
・回路定数の設定によっては、「発振状態」の他に「両方のトランジスタがONしたまま」という安定状態が存在する。
 (従って、「確実な動作」を期待される用途にはあまりお奨め出来ない。)