成功するユダヤ人が多いのはなぜか

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成功するユダヤ人が多いのはなぜか。 このことに関して、ユダヤ人のラビ(ユダヤ教指導者)であるマーヴィン・トケイヤーが著書『ユダヤ人の発想』(徳間書店)の中で述べていることを紹介しておく。 マーヴィン・トケイヤーは1936年にニューヨークでハンガリー系ユダヤ人の家庭に生まれたハザール系ユダヤ人である。 彼は1962年にユダヤ神学校でラビの資格を取得し、同年、アメリカ軍の従軍ラビとして初来日し、1964年まで日本で過ごした。 彼は1967年に再び来日し、東京広尾の「日本ユダヤ教団」の初代ラビに就任し、1976年まで日本に滞在し、ユダヤ人と日本人の比較文化論を発表した。 彼は早稲田大学で古代ヘブライ文化を教えたこともある。 アメリカに帰国後、ユダヤ人学校の校長を歴任した。
以下、マーヴィン・トケイヤー著『ユダヤ人の発想』(徳間書店)からの抜粋
ユダヤ人の人口は、世界人口に対して0.38%にしかならない。 それなのにユダヤ人は人類のエリートとなっている。 ノーベル賞をとってみれば、1901年以来今日まで、経済学で60%強、医学で20%強、物理学で20%強、化学で10%強、文学で10%前後の受賞者がユダヤ人である。 本来ならば、1600万人しかいないのだから、人口比からいけば、ノーベル賞を一つも取ることができなくても、おかしくないはずである。 ユダヤ人というと、日本では一般的に「金儲けがうまい」というイメージが強い。 しかし、ユダヤ人は世界の中で最も知的生産力の高い人間であるといえよう。 ユダヤ人は知的な努力を通じて、ほとんどあらゆる分野において上の下か、中の上以上の地位を占め、そうした生活を楽しんでいる。 ユダヤ人はただ努力するだけではなく、適応性が豊かで、創造力に富んでいるのだ。  〈中略〉  ユダヤ人は物質的に恵まれることのない社会制度の下で長い間暮してきた。 それにもかかわらず、ユダヤ人は成功する例が極めて高かった。 それは、なぜだろうか。 言うまでもなく、その原因はユダヤ人がまず自分を創造するからである。 ユダヤ人にとっては、自分をつくり出すことが最も大きな財産となる。 そして、このようなユニークな創造力はユダヤ的な物の見方や生活の仕方から生まれてきたのである。 もし、ユダヤ人がいなければ、今日の現代世界はなかったとすら言ってもよいだろう。 ユダヤ人は近代に入ってから世界を改革するとともに、科学・政治・芸術など、あらゆる面で新しい世界を生み出す原動力となってきた。 ここで思いつくままに、ユダヤ人の名前をあげてみよう。 まず政治関係のグループとしては、1878年から1880年にかけてイギリスの名宰相といわれたベンジャミン・ディズレーリ。 ドイツの近世社会主義者のエドアルド・ベルンシュタイン。 ドイツの経済学者であり、社会主義者であったローザ・ルクセンブルク。 1954年にフランスの首相を務めたピエール・マンデス・フランス。 あるいは日本でも過激派学生の信仰の的となっているキューバの革命家エルネスト・チェ・ゲバラ。 ロシア革命に戻ればレオン・トロツキー、グリゴリー・Y・ジノビエフ、レオ・B・カーメネフがユダヤ人であった。 ビジネス界で私の頭にすぐ浮かぶ名前といえば、まずイタリアの「オリベッティ社」の創立者であるカミロ・オリベッティ。 フランスの自動車会社「シトロエン」の創立者であるアンドレ・G・シトロエン。 アメリカであれば、音と電波の帝王といわれ、「RCA」の創立者であり、「NBC」に長く君臨したデイヴィッド・サーノフ。 有名な化粧品会社「ヘレナ・ルービンシュタイン社」の創立者であるヘレナ・ルービンシュタイン。 一流広告会社の「グレイ社」を創立したローレンス・バレンシュタイン。 学者について何人か列挙していけば、結核菌・コレラ菌の発見者ロベルト・コッホ。 フランスの哲学者アンリ・ベルグソン。 エスペラント語を創り出したポーランド人のラザロ・ザメンホフ。 ストレプトマイシンの発見者であるアメリカのセルマン・ワクスマン。 心理学者で社会哲学者あるいは作家としても有名なエーリッヒ・フロム。 物理学者で原子爆弾の父といわれるロバート・オッペンハイマー。 経済学者で合衆国連邦銀行の理事長を務めたアーサー・バーンズ。 同じように経済学者としては、今日活躍しているミルトン・フリードマン、ポール・A・サミュエルソンといった名前が頭に浮かぶ。 マスコミの世界では、イギリスの「ロイター社」をつくったT・J・バロン・ロイター。「ニューヨークタイムズ」を保有してきたザルツバーガー家。 また、コラムニストとして有名なウォルター・リップマンを初め、多くのコラムニストがいる。 音楽家であればメンデルスゾーンを初め、ブルーノ・ワルター、アルトゥール・ルービンシュタイン、ヤッシャ・ハイフェッツ、ジョージ・ガーシュイン、ウラジミール・ホロビッツ、レナード・バーンスタイン、アイザック・スターンなど多数。 ほかに、ベニー・グッドマンやアービング・バーリンがユダヤ人である。 アービング・バーリンについては、皮肉なことがある。 今日キリスト教徒の間でクリスマスの歌として最も親しまれている「ホワイト・クリスマス」の作曲者はユダヤ人であるアービング・バーリンなのだ。 もちろん、ユダヤ人はキリストを神として認めていないので、クリスマスを祝うことはない。 いずれにしろ、歴史上、各界で活躍したユダヤ人のリストをつくれば、膨大な人名録が出来上がるだろう。 ここであげたのは、私がいま思いついた名前にしかすぎない。  〈中略〉  日本ではしばしばユダヤ人は「ずるい商売をする」と言われている。 これは終戦後、まだ日本がお土産用のライターとか、竹で作ったクマデといった雑貨類を輸出の中心としていたころの経験に根ざす偏見である。 占領下の日本に初めて乗り込んできたのはユダヤ商人たちであった。 彼らユダヤ商人たちは容赦なく買いたたいた。 これは、日本人とユダヤ人のビジネスにおける正直さ、あるいは正当さを巡る考え方の違いが原因となっている。 商人ができるだけ安い値段で買いつけ、できるだけ高い値段で売りつけたいとするのは、当然のことである。 これは、ユダヤ人だけに限ったことではない。 日本の会社でも、営利事業である以上は変わるところがないはずである。  〈中略〉  ユダヤ人にとっては、物をできるだけ高く売り、そして買うときはできるだけ安く買うことは、少しも悪いことであるとは考えられていない。 もし相手が、高く買うのが嫌だったり、あるいは買いたたかれるのが嫌だったら、それを主張すればいいのだ。 誰だって富・財産を残したいと思っている。 ところが、キリスト教徒や日本人はそれを口にしない。 一方、ユダヤ人はお金のことを口にするのを恥じない。 どちらが自然だろうか。 ユダヤ人はお金を道具だと思っている。 道具はできるだけ多く持っていたほうがよい。 これはユダヤ人のお金に対する態度を物語っていると言うよりも、ユダヤ人の自然な無理のない考え方を示していると言ったほうがよいだろう。 お金をたくさん持っているというのは、誰にとっても愉快なものである。 ユダヤ人はお金を、キリスト教徒のように汚いものとして蔑んだりしない。 お金はよいものであると考えている。  〈中略〉  日本ではどちらかというと、お金について気前のよい人間が喜ばれる。 清貧とか、あるいは、「江戸っ子は宵越しの金を持たない」といったように、お金に全く執着を持たない人間が美化されることが多い。 しかし、ユダヤの伝統の中には、日本人が好む「清貧」といった考え方は全くない。 貧しいということは、蔑みの対象とはならないが、自慢できることではない。 また、ユダヤの伝統の中には、お金を汚いものだとする考え方も全く存在しない。 お金に対する健全な考え方があるのだ。